「健康のために何を食べるのがいいのか知りたい!」
「シンプルな食事法で健康を手に入れたい。」
「妊婦さん、成長期の子供によい食事の正しい知識を知りたい!」
という方にはおすすめできる本です。文章も比較的読みやすく、家族や友人にも勧めやすい一冊かと思います。
※記事の斜体文字は引用部分です
本の概要と要約
この本では、最新の膨大な研究論文をもとに、体に良いことが科学的に「強く」証明されている食事を具体的に紹介しています。また、本書で紹介されている食事法を2週間ほど続けることで、自分の体が変わってきたことを実感できるようになると記載されております。
著者はどんな人?
著者:津川友介
〇東北大学医学部を卒業後、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。
〇聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード公衆衛生大学院での勤務を経て、2017年より現職であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)内科学助教授として活動しています。
〇専門は医療政策学、医療経済学、統計学(因果推論)であり、JAMA Intern Med、BMJ等に原著論文を複数掲載しています。
〇著書には、『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学』(中室牧子氏と共著、ダイヤモンド社)、『世界一わかりやすい医療政策の教科書』(医学書院)などがあります。
〇ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信
著者が登場するユーチューブ動画です。興味のある方はこちらも是非。
この本の見どころをギュッとまとめると?
ズバリ、以下の通りにまとめられると思います。
1. エビデンス(その食品が健康によいとされる根拠や研究結果など)には明確に「レベル」があり、弱いエビデンスしかない健康食品と言われるものも多い(例えば、「納豆」、「コーヒー」、「ヨーグルト」など)
2. 強いエビデンスに基づく食品はズバリ、①魚、②野菜と果物、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類である
3. 食べ方も重要であり、成分だけに惑わされてはいけない(果物は糖尿病を予防するが果物ジュースは糖尿病のリスクを上げる、など)
順番に、なるべくわかりやすく解説していきます。
1.エビデンスには明確に「レベル」があり、弱いエビデンスしかない健康食品といわれるものも多い(例えば、「納豆」、「コーヒー」、「ヨーグルト」など)
著者いはく、エビデンスは「レベル」が大事であり、例えばランダム化比較試験と観察研究(※)であれば、前者の方がレベルが高い。さらにレベルが高いのが「メタアナリシス(複数の研究結果をとりまとめた研究手法)」である。例えば一つの研究であれば、特定の国や集団にしか認められないパターンだったかもしれない。しかし10個も20個もの研究が、同じような食事と健康の関係を証明していれば、それはかなり信頼できる研究である。と記載しています。
※補足
ランダム化比較試験と観察研究は、両方とも臨床研究の一種ですが、デザインや目的が異なります。ランダム化比較試験は、治療法や介入法の有効性を検証するために、被験者をランダムに2つ以上のグループに分け、それぞれに異なる治療法や介入法を施して比較する研究です。一方、観察研究は、既に治療法や介入法を受けている患者を対象に、その治療法や介入法の効果を調べる研究です。観察研究は、実際の臨床現場での介入の有効性を測定するために使用されます。観察研究は、ランダム化比較試験に比べて、交絡要因が多く、因果関係を結論づけることができない場合があります。
ここは難しい内容ですが、例えば納豆であれば、「健康に良いと解釈できる研究結果はあるものの、研究事例がまだ少なかったり、観察研究しかなく、少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている」程度でしかないということです。
具体的には、以下の食品が「エビデンスのレベルが低い(ひょっとしたら健康にいいかも)」ものとして紹介されております。
・納豆
・ヨーグルト
・ダークチョコ
・お酢
・豆乳
etc…
このエビデンスレベルを踏まえて、書籍の中では、以下の5グループに分けて食品例が紹介されています。詳細も気になる方はぜひ本書をお手に取って読んでいただくことをおすすめいたします。
①健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品。
(魚、野菜と果物など)
②少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている。(納豆、お酢など)
③健康へのメリットもデメリットも報告されていない食品(その他多くの食品)
④少数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている(マヨネーズなど)
⑤健康に悪いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品(赤い肉、ハム、白い炭水化物、じゃがいもなど)
ちなみに、私たちがテレビなどで目にしている「体に良いことが最新の研究で明らかになった」という食品のほとんどはグループ2に該当するそうです。つまり、本当に体に良いから確定的なことは言えない段階であり、重要なのは、目新しさはなくとも長年の研究で昔から支持されている食品を、日々の食事の中に取り入れることだと述べています。
2. 強いエビデンスに基づく食品はズバリ、魚、野菜と果物、茶色い炭水化物、オリーブオイル、ナッツ類である
著者は本当に健康に良い、つまり脳卒中、心筋梗塞、ガンなどのリスクを下げると考えられている食品は、魚、野菜と果物、茶色い炭水化物、オリーブオイル、ナッツ類であると断言しています。以下、本書からわかりやすく特に面白いと感じた部分をピックアップしてご紹介します。
①オリーブオイルやナッツは脳卒中やがんのリスクを下げ、魚は心筋梗塞や乳がんのリスクを下げる。
地中海食の代表的な食品です。個々の食品はもちろん、地中海食が体に良いというエビデンスも複数あります。これは以前私がライフスパンの書籍レビューで紹介したブルーゾーンのある地域(イタリアのサルデーニャ島、ギリシャのイカリア島)とも一致しています。
②玄米の用に精製されていない茶色い炭水化物は、食物繊維や栄養成分を豊富に含むので、肥満や動脈硬化のリスクをむしろ下げる。
お米や小麦は精製されて柔らかく食べやすくされていることが多い。白米や小麦粉が該当する。これら白い炭水化物は、血糖値を上げ、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気のリスクを高める可能性が、多くの研究で報告されている。また、玄米の用に精製されていない茶色い炭水化物は、食物繊維や栄養成分を豊富に含むので、肥満や動脈硬化のリスクをむしろ下げると言われている。と著者は紹介しています。
例えば、白い炭水化物・茶色い炭水化物については、以下のようにデータが詳細に紹介されています。
・アメリカ、英国、北欧の国々で行われた研究を統合した78万6千人のデータを用いたメタアナリシスの結果、1日70gの茶色い炭水化物を摂取したグループは、茶色い炭水化物をほとんど食べないグループと比較して、死亡率が22%低かった。
・「日本人にはあてはまらないのでは?」という話もあるが、2010年に、○○医療研究センターの■■氏が行った…(中略)研究によると、日本人においても、白米の摂取量が多ければ多いほど糖尿病になる可能性が高くなることが明らかになった。(グラフ付き解説あり)
こうした詳細かつ分かりやすい研究結果を引用して、身近な食材をバッサバッサとジャッジしており、非常に面白くて一気読みしやすい本でもあるかと思います。
3. 食べ方も重要であり、成分だけに惑わされてはいけない。(果物は糖尿病を予防するが果物ジュースは糖尿病のリスクを上げる、など)
本書で紹介されており私も衝撃的だった記述をご紹介します。
1990年代にβカロテンを含んだジュースが一世を風靡したが最近は見かけない。これは、βカロテンを含んだジュースが健康に良くない、むしろ有害である可能性が高いと分かってきたからである。1970年代までの研究で、緑黄色野菜や果物を沢山摂取している人に胃がんや肺がんが少ないことが報告され、これらに多く含まれるβカロテンの効果と考えられた。しかしランダム化比較試験の結果、健康被害をもたらすことが分かった。
・死亡率、肺がん、心筋梗塞、膀胱がんのリスク上昇
・男性よりも女性の方が大きい可能性
・βカロテンをサプリメントとして摂取することで、死亡率が約7%増加結果として、緑黄色野菜の接種は病気のリスクを下げるものの、抽出したβカロテンは病気のリスクをあげてしまうことが判明しています。
つまりこれは、食品に含まれる「成分」だけに惑わされず、摂取の仕方も含めて本当に効果があるのか、強いエビデンスがあるのかを探ることが大事、ということです。
余談ですが、リコピンが身体によいといというエビデンスも実はなく、トマト自体はそれなりに身体によい(野菜の中でも特別トマトがよいというエビデンスはない)程度のエビデンスしかない、とのことです。
他の読者からの評判や感想
以下、ネット上で見つけた感想・口コミなどを紹介しています。
残念な大吉みたいなコメントついてますが、健康診断「A」判定でした!去年の「E」判定からまさかのV字回復!「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の煽り「2週間ほど本書で説明している食事法を続けてみてください」、みごと2週間で結果出しました!@yusuke_tsugawa さん、ありがとう! pic.twitter.com/CxnaSAH4mS
— 松浦広明(MUPPY) (@MuppyxMuppy) May 21, 2018
→本当に実践されて効果を感じている方がいるようです!
これめちゃくちゃオススメ。
身の回りの根拠の無いダイエット方法や健康法を否定するだけでなく、あらゆるデータをエビデンスとして、最適解をわかりやすく図解してくれてる。面白かったー。世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 https://t.co/RxbQ7cSvtN
— おこたぬくぬく (@nknk0419) August 2, 2018
→非常に同意です!!多くの身近な食材を、わかりやすく解説してくれている名著ですね。
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」がおススメです!
様々な健康法が飛び交い、スーパーフードと呼ばれるものが続々と登場してますが、この本ではエビデンスがある食事法のみに論点を置いてシンプルイズベストを謳う一冊です。
— ぷる (@gyas12y48) January 17, 2019
→大事なことは目新しさではなく、昔からある多くの研究に長年裏打ちされた食品、ということを教えてくれる一冊ですね。
まとめ
以上、書籍「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の紹介でした。本当に健康によいとされる食品・食べ方を知ることができる、だけではなく、目新しい情報にも飛びつかないようになれる、人生を好転させるパワーを持った一冊ですね!読みやすく友人やご家族にもおすすめできる本だと思います!