「ライフスパンの要約やレビューが知りたい」
「アンチエイジングの第一人者が説く若返りの方法を知りたい」
「プチ断食、サウナに興味がある」
という方にはおすすめできる本です。記載内容は非常に丁寧で論理的ですが、専門的な用語も多く登場し、かなり難解に思われる方もいるかと思います。(正直にいって難易度は激ムズです…)しかしながら、記載内容は非常に刺激的で面白く、私の人生を変えた一冊です。
一応私、理系大学院卒で国内外で学会発表の経験もあり、ある程度難しい理系の本も大好物ですので、今回はなるべくこの本をわかりやすく解説したいと思います!
本の概要と要約
この本はデイビッド・A・シンクレア博士による書籍で、寿命(特に健康寿命)に焦点を当て、なぜ私たちは老化するのか、そしてそれを克服する方法について、理論的に解説しています。革新的なアプローチと科学的根拠に基づいた情報が多く、細胞の健康、遺伝子、食事の役割を紐解きながら、長寿命の可能性を探る一冊です。また、健康寿命に興味を抱く人々にとって注目の書籍です。
著者はどんな人?
著者:デイビッド・シンクレア博士
〇ハーバード大学医学部教授
〇ポール・F・グレン老化生物学研究センター所長
〇専門分野は生化学・遺伝学
〇 代謝プロセスと寿命の関連性に関する研究で知られ、科学界で高い評価を受けている。
〇いくつものバイオベンチャー企業の起業を支援しその科学諮問委員会の委員長を務める
〇2014年にTIME誌の「最も影響力のある100人」に選出
〇母国オーストラリアでナイトの爵位に相当する勲章を授与され、民間大使も務める
とんでもない経歴ですね…。書籍を読んでも文章の組み立てが非常にロジカルで、著者の能力の高さがうかがえます…。
著者が登場するユーチューブ動画です。50才を超えているとは思えない程お若い!日本語訳をつけて動画再生が可能ですので、興味のある方はこちらも是非。
読者へのメッセージをギュッとまとめると?
ズバリ、以下の通りにまとめられると思います。
① 老化は治療できる病であり、120齢まで健康寿命を延ばすことも十分に期待できる。
② 健康寿命を延ばすカギは長寿遺伝子「サーチュイン」であり、適度なストレス(一部の運動、ときおりの絶食、低タンパクの食事、サウナなど)によってはたらかせることができる
③ 長寿社会になっても人類はきっとより良い未来を目指せる
順番に、なるべくわかりやすく解説していきます。
① 老化は治療できる病であり、120齢まで健康寿命を延ばすことも十分に期待できる。
皆さんは羊のドリー覚えているでしょうか?あの、世界初のクローン技術の成功例として話題になった羊です。
(引用:wikipedia)
・1996年に生まれた、世界初の哺乳類の体細胞クローン
・わずか6歳で死亡
このニュースから、当時は、「クローン技術で誕生した動物は早く死ぬ」という説が有名ですが、それは間違いであることが現在はわかっています。クローンとして生を享けて、正常で健全な寿命を全うした動物には、ヤギ、ヒツジ、マウス、ウシ等がおり、要するに「大人のDNAからでも健全なクローンがつくれる」→「大人になっても遺伝情報は喪失しない」ことが分かっています。
では、DNAは大人になっても喪失しないのになぜ生物は老化するのか…。それは、DNAから情報を読み込む機能が劣化することによって衰えるのです。
(引用:wikipedia)
著者いわく、人間は「古いDVDプレーヤーのようなもの」と言っています。ディスクを読み取って映像を流す。これは遺伝情報を読み取って生体活動を行う、というイメージです。DVDはディスクが欠損したら復活させることはできません。しかし、DVDの表面に引っかき傷ができただけなら、普通は情報を回復できます。
クローン技術が証明する通り、私達の細胞は若い頃のデジタル情報を高齢になっても保持していることは既に明らかになっています。つまり、若返るためには傷を取り除く研磨剤をみつければいいのであり、それが長寿遺伝子「サーチュイン」である、ということです。
そして、「かぜ」という病気が「発熱」・「咳」・「頭痛」・「鼻水」などの症状を発生させるように、「老化」という病気が「認知症」・「ガン」・「心臓病」などを発生させている、と著者はいっています。「老化」こそがこれら全てにかかわるリスク因子ということです。
② 長寿遺伝子は適度なストレス(低タンパクの食事、ときおりの絶食、一部の運動、サウナなど)ではたらかせることができる
長寿遺伝子をはたらかせるのに重要なことは、「適度なストレスを体に与えること」だそうです。軽い飢餓状態にする、運動をする、体を寒さや暑さにさらす、といったことは全てこの「適度なストレス」に該当します。以下、順番に解説していきます。
・食事について
皆さんは「ブルーゾーン」という言葉をご存知でしょうか?これは百歳以上の長寿者が特に多い地域をさします。
ブルーゾーン(一部)
・日本の沖縄
・コスタリカのニコヤ島
・イタリアのサルデーニャ島
・中国南部の巴馬ヤオ族自治県
そして、ブルーゾーンに共通する食習慣は、以下のものがあります。
・野菜や 豆類や 全粒の穀物を多く取り肉や乳製品や砂糖を控える
・食事回数の制限や断食をしている(朝食を食べない、市宗教上の祭日などに肉や卵を食べない、等)
具体的な研究例の一部として、書籍の中では「沖縄」と「中国南部の巴馬ヤオ族自治県」の研究例が紹介されています。(あくまで一例であり、書籍内では膨大な量の研究結果が紹介されています。)
・(書籍より引用)1978年には100歳以上の住民が多いことで知られる沖縄で生体エネルギーを研究する香川靖雄が1つの発見をした。 沖縄の児童の摂取する総カロリー量が本土の児童の2/3に満たなかったのである。当時の沖縄では成人の総カロリー 量も少なく 今度の成人より約20%も低かった。沖縄の人々は長生きするだけでなく健康寿命もまた長いことに 香川は気づく。しかも脳血管系疾患、悪性腫瘍、心臓病が非常に少なかった。
・(書籍より引用)同じ長寿のホットスポットでも中国南部の巴馬ヤオ族自治県などは、特に高齢者では朝食をとる 習慣がない。朝食はとらず、昼食は少量、夕暮れに家族ともっとボリュームのある食事をする。一日16時間 余りを何も食べずに過ごすのが普通である。こうした地域を調査すると継続的に カロリーを制限する方法はいくつもあるようで、絶えず空腹でいるわけではなく一定の時間だけ体を飢えさせることによって高い効果を得ている。
ズバリ、健康長寿のためには、「野菜や豆類や全粒の穀物を多く取ること」、「食事の量・回数を減らすこと」が良いということです。
・運動について
適度な運動も長寿遺伝子を働かせます。一番多く活性化したのは高強度のインターバルトレーニングであり、これを行うと心拍数や呼吸数が著しく上昇します。高齢の被験者ほど活性効果が大きかったとのことです。
・サウナについて
長寿遺伝子は寒さでも活性化することが分かっています。鳥肌が立つ、歯がカチカチなる、腕が震えるというのは危険なサインではなく、こうした状態をある程度経験することにより、長寿遺伝子は必要なストレスを受け取って健康的な脂肪を増やしてくれるという研究結果が出ています。
一方で 高温に関しては 低温の場合ほどはっきした人体での研究結果はまだ出ていないのですが、例えばサウナを頻繁に利用する人はそうでない人と比べて、健康状態において著しく優れているという研究結果はいくつもあります。
ここではサラっと記載しましたが、本書内ではこうした理論の証拠となるデータや研究例が大量に、しかも懇切丁寧に紹介されており、これが本書を難解にしている最も大きな理由の一つだと思います。また、いずれの研究も人体実験をしてしまうと倫理的に抵触してしまうものが多く、あくまで実験動物や研究室レベルでの実験、またはブルーゾーン等特定地域でのデータ収集による分析結果に基づくものが多いようです。
③ 長寿社会になっても人類はきっとより良い未来を目指せる
著者は今後十年間で健康寿命はどこまで伸びるのかを試算し、結果、先進諸国の平均寿命は控えめに見積もって113歳になると述べています。
また、長寿社会の話といつもセットになるのが、「人口増加問題」です。これに対して著者は以下の通り意見を述べています。
・10億人から20億人になったのには 120年余りを要した。 30億人になったのはわずか33年間 40億人になったのはわずか14年間 。ここ数十年は人口増加のペースが着実に落ちてきている主な原因は 基本的人権や経済的 社会的機会が向上するにつれて女性が 以前ほど子供生まない選択をするようになったことだ。
・ 世界の平均人口増加率は1970年頃には 年間 2%だったのに対し 最近では約1%にまで落ちている国連の人口統計学者は世界人口が2100年までに110億人に達してからは横ばいになり以降は減少に転じると予測している 。
・人口が増加した この世界での暮らしは確実に良くなっている。 もちろん私たちが地球に与えた大規模な破壊を忘れていいものではないし ただに対して働いた邪悪な行為は家に及ばない。しかし 負の側面にばかり注目し続けていると 世界の現状や未来を考える時にもそれに引きずられてしまう 。
・今や社会はグローバル化し 極貧率は10%を切ってさらに急速に低下しつつある 世界中で 教育機関が向上し 世界の識字率は1800年には12% 1900年には21% 現在は 85%である。 子供の死亡率は1900年には 36% 2000年には8%切るまでになっている
・これからはもっと高齢者が活躍できる社会になる。高齢の労働者は病気になりやすく仕事が遅く新しいテクノロジーを扱えないと決めてかかっているという年齢差別が蔓延している もちろん。これらは全て間違っている。特に指導者の立場にある人 経営者については全く当てはまらない。確かに昔はテクノロジーを習得する時間がかかったかもしれないが、現代の教養ある高齢者は66歳より若い世代と同じくらいのテクノロジーを使いこなしている。忘れてはいけない、彼らの世代が月にロケットを送り、超音速旅客機やパソコンを発明したのだ。健康な 寿命を伸ばすことができれば 社会への投資は何倍にもなって戻ってくる。
他の読者からの評判や感想
以下、ネット上で見つけた感想・口コミなどを紹介しています。
『LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界』電子版50%還元中。科学の進歩や社会の変化によって人類の寿命は大幅に伸びたが、”老い”そのものを克服する可能性がSFじゃなくなりつつある…と長寿研究者が語る面白い本。老いの消えた社会がどうなるか…の考察も刺激的。https://t.co/RnCmAAAocs
— ぬまがさワタリ (@numagasa) February 18, 2023
→老いの消えた社会への著者の考え方も、本書ではかなり厚めに語られており、ワクワクするような考察が述べられています。
『LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界』デビッド・A・シンクレア,マシュー・D・ラプラント
内容はかなり専門的で難しい。
正直ほとんど理解できなかった。
でも、長く生きることができる未来がある。
生きる=健康ではない。
健康で長くいきるため、
老化という病気と向き合う。#読書メーター pic.twitter.com/c067IA4J2B— みゃ〜@ (@myamya6969) May 22, 2023
→これには非常に同意です。内容はかなり専門的で難しいです。冒頭は読みやす野ですが、第一部からいきなり専門用語のオンパレードです。「核酸」、「細胞膜」、「ゲノム」、「遺伝子の抑制」、「RNA」といったワードに拒否反応が出ない人であれば大変面白い本かと思います…。
まとめ
以上、書籍「LIFESPAN (ライフスパン) 老いなき世界」の紹介でした。
おそらく「人間の老い」について、世界で最も知見ある方の一人である著者が、「老化は病気であり治せる」という一見トンデモ理論のように見える内容を、ロジカルに紐解いていく興味深い一冊です。
実際に私もこの本に出会ってから、「健康と食事」について興味を持ち、他にも多くの書籍を読みましたが、似たような考察・結論をとる書籍が多い印象です。食生活も意識的にかえ、この2年間、基本は朝食をとらず一日二食、キムチと納豆はほぼ毎日食べる、定期的に運動の習い事(格闘技)をするようにしており、お陰様で超健康体です。
特に自分の食生活に不安をいただいている方は、これを機に見直してみるのはいかがでしょうか?